2014年御翼10月号その1

心配や罪を抱えて眠りにつくな―ノーマン・V・ピール牧師

 ケイティー・ベルランディ(臨床社会福祉士)は、ノーマン・V・ピール博士の孫娘である。ピール博士は、世界で二千万部売れた『積極的考え方の力』の著者であり、ケイティーさんは、ピール牧師の宣教活動を継承しているクリスチャンである。
 ピール博士は、シューラー博士の良い指導者・友であった。シューラー牧師は、厳格なオランダ・カルヴィン派の教会で育った。そこでは、「神はお前のことは嫌いで、お前を地獄に落とすのを待ちかまえている。もし完全な者となれば、それから逃れられるかもしれないぞ」と教えられてきた。しかし、ピール牧師から愛なる神は、前向きな思いで罪人を受け入れてくださると教えられ、シューラー牧師の人生と、伝道活動は激変する。
 ピール博士夫妻が与えた最大の影響力は、人は神に愛されている存在だと知らしめることであり、それゆえ、人は自分自身を愛すべきだということだとケイティーさんは言う。ピール博士は、教会を聖書に基づく本来あるべき姿、即ち、罪人への神の愛を基盤としたものへと戻した人である。

 ある実業家が、ふとした機会に、人妻と関係を持ってしまう。彼はこの関係を断ち切ろうと何度も試みた。彼がこの関係から逃げ出すようなら、自分の夫に二人の関係を暴露すると不倫相手が脅していたので、できないでいた。もし相手の夫に情事を知られたら、彼の社会的地位は台無しになる。この心配と罪意識の結果、彼は眠ることも休むこともできない。仕事する活力も失い、重要案件が未決のまま放っておかれ、それにつれて事態も深刻になってきていた。
 精神分析医が牧師に会ってはどうかと提案した時、彼は、「牧師なんかに自分の不眠を治す方法など分かるはずがない」と言って抗議した。医者だけが、効き目のある薬をくれるものだと思っていたのだ。ピール牧師は彼に次のように尋ねた。「非常に迷惑で不愉快なやつとベッドを共にしているのに、どうして眠れるでしょうか。あなたは、一方に心配を置き、もう一方に罪を置いて、その間にはさまって毎晩眠ろうといった不可能な離れわざをしようとしているのです。いろいろな睡眠薬をたくさんお飲みになったということですが、何の効き目もなかったでしょう。薬はあなたの心の底には届かないからです。この不眠症はそもそも、心の底から発しています。あなたが眠れるようになり、力を回復するためには、この心配と罪の意識を根絶しなければなりません」と。そしてピール博士は次のような簡単な方法を勧めた。このことが露顕(ろけん)しはしないかという心配を取り除くために、正しいことを行い(その女性との関係を断ち切ること)、その結果、何が起きようとも、恐れずにそれに直面する心がまえを持つということである。「何ごとでも正しいことをすれば、正しく転じるものですよ。正しい行いをして、間違いを犯すということはありません。事態を神の御手にゆだね、あなたはただ正しいことをしなさい」
 彼はそれを実行した。その結果、相手の女性が賢かったためか、愛情をほかに転ずる道があったためか、いずれにしても彼との関係を絶った。彼は神の赦しを求めることによって罪が帳消しにされたのだ。神の赦しは、誠実に求めさえすれば、必ず得られる。この患者は、そこに終止符と救いを見いだした。この二重の重荷が彼の頭から除かれた時、彼の人格は再び正常な機能を働かせ始めた。彼は眠れるようになり、平和と力を回復した。

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